2010年頃からディスクブレーキ仕様のロードバイクが登場し始めました。
今では、「シマノ」「カンパニョーロ」「スラム」の三大メーカーもロードバイク向けディスクブレーキ用コンポーネントを製品化しています。
ディスクブレーキは雨天に強い
リムブレーキの方が有利な場合もある
ディスクブレーキのロードバイクを検討している人
今回の記事は、ディスクブレーキの仕様や特徴についてまとめました。
この記事を読んで、ディスクブレーキのロードバイクに乗り換えるか、そのままリムブレーキのロードバイクに乗り続けるか検討しましょう。
それでは、どうぞ。
目次
無理に買い替える必要はない

ディスクブレーキは雨天でも変わらない制動力がありますが、今乗っているロードバイクをディスクブレーキ化させると多額の費用が掛かりますので、問題がなければ無理に乗り替える必要はないと思います。
また、ディスクブレーキはリムブレーキより重量増になりますので、ヒルクライムメインで走られる人はリムブレーキの方が上りで有利になります。
新しくロードバイクを買う予定がある人は、ディスクブレーキ車も検討しましょう。
ディスクブレーキ化の問題点

リアエンド幅の違い
リムブレーキとディスクブレーキのフレームとでは、リアエンドの幅が違います。
リムブレーキのエンド幅はフロント100mmリア130mmで、ディスクブレーキのエンド幅はフロント100mmリア142mmです。
フロントフォークエンド幅は共通ですが、リアエンドはディスクブレーキ用フレームの方が大きく、リムブレーキ用フレームにディスクブレーキのホイールは取り付ける事ができません。
ホイール固定規格の違い
フロントフォークエンド幅は100mmと共通ですが、ホイールの取り付け方が違います。
リムブレーキ用ホイールは、ハブにクイックレリーズが付いた状態でフレームに差し込んでからクイックレリーズのレバーで固定します。
ディスクブレーキ用ホイールは、ホイールをフレームに差し込んだ後でスルーアクスルをフレームに差し込み、締め付けて固定します。
その取付方法の違いにより、リムブレーキ用フレームはエンド部がU字穴形状になっており、ディスクブレーキ用フレームはエンド部が丸穴形状になっています。
その為、同じフロントエンド幅でもリムブレーキ用ホイールとディスクブレーキ用ホイールで互換性がなく、取り付ける事ができません。
ディスクブレーキ用台座がない
リムブレーキ用フレームにはディスクブレーキキャリパーの台座がありませんので、ディスクブレーキキャリパーを付ける事ができません。
また、台座を自作してフレームに取り付けても、そもそもフレームに台座を付ける設計をしていませんので、強度不足でフレームのリアステーが破損するリスクが高く危険です。
他にも、ディスクローターとブレーキキャリパーの隙間は、リムブレーキより非常に狭いです。
少しでもずれると、ブレーキを握っていない時でもディスクパッドがディスクローターに接触します。
ディスクローターが付けられない
リムブレーキ用ホイールのハブには、ディスクローターが付けられない構造になっています。
また、ハブ外寸の違いと、ホイールを固定する規格が違う為、リムブレーキ用ホイールをディスクブレーキ用フレームに付ける事ができません。
PowerTapやGOKISOなど、高価なハブを使っている人は、そのホイール資産を生かす事ができません。
ラジアル組はできない
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出典:5ch 【手組み】ホイール組は心の振れ取り〇〇H【車輪】
ほとんどのリムブレーキ用市販ホイールの前輪は、ラジアル組で組み立てられています。
そのラジアル組は、力を伝達する事ができません。
リムブレーキの場合はタイヤから伝わる力がリムに伝わる為、リムに抵抗を加えれば止まる事ができます。
ですが、ディスクローターに抵抗を加えて止まる場合は、力の伝達経路にスポークがあります。
ラジアル組はスポークがハブ中心に向かって真っすぐ配列されていますので、その状態で力が伝わると、スポークがねじれハブ中心からずれてしまい力を伝達できません。
また、リムに想定外の方向の力が加わる事で、リムが変形したり割れたりします。
自転車を買い替えた方がいいかも
フレームやフロントフォークの他に、デュアルコントロールレバーとディスクブレーキキャリパーとディスクローターとホイールの交換が必要です。
これらを総替えすると、もう別の自転車になってしまいまい、費用も高額になります。
ですので、自転車自体を買い替えた方が無難です。
フロントのみなら難しくない
フロントのみディスクブレーキ化させるのでしたら、費用は半分以下になります。
フロントフォーク交換だけでディスクブレーキ化の土台ができます。
あとは、「右側デュアルコントロールレバー」「フロント用ディスクブレーキキャリパー」「ディスクローター」「フロント用ホイール」を用意すればいいです。
ブレーキを掛けると前輪に荷重が集中する傾向になりますので、前輪だけディスクブレーキ化しても、ブレーキは正常にできると思います。
ただし、リアブレーキはリムブレーキのままですので、前輪のブレーキを強く掛け過ぎると自転車とライダーが前転して落車転倒しますので、注意してください。
コンポーネントについて

重量が増える
リムブレーキはリムブレーキキャリパーだけ必要ですが、ディスクブレーキはブレーキキャリパーの他にリザーバータンクとディスクローターと作動油が必要ですので、重量が増えます。
車体重量6.8kgの制限がある実業団レースでは、他を軽量化して6.8kgに近づければいいですので、軽量化に余裕があれば問題ありません。
ですが、重量制限のない一般のヒルクライムレースでは、重くなる分不利になります。
ディスクローターの選定
ロードバイクの場合、ディスクブレーキ用のディスクローターは、140mmと160mmの2種類あります。
フレームによっては、ディスクブレーキキャリパーが付けられないサイズがありますので、購入前にフレームの仕様を確認しましょう。
フルードは定期的な交換が必要
ブレーキフルード(作動油)は使っている内に吸湿します。
吸湿すると気泡が発生し、ブレーキを掛けた時に気泡が操作力を吸収します。
その為、ブレーキを握った感触がスカスカになり、ブレーキが利きづらく非常に危険です。
ブレーキフルードは定期的に交換しましょう。
ディスクブレーキのメリット

カーボンリムでも高い制動力
ブレーキ時にリムを挟み込む必要がなく、リムブレーキで必要なリムの強度が不要ですので、リムを軽量化できます。
また、リムブレーキの場合では、アルミリムよりカーボンリムの方が制動力は劣ります。
ですが、ディスクブレーキの場合では、制動部分がリムではなくディスクローターですので、リムの素材がカーボンでも制動力に差がありません。
リムが減らず長寿命
リムブレーキの場合ではブレーキシューをリムに擦り付けて減速しますので、使っている内にリムがすり減ってしまいます。
ですが、ディスクブレーキの場合ではリムを挟み込む必要がありませんので、ブレーキ操作でリムはすり減りませんので、ホイールが長く使えます。
ただし、走っている内に路面の振動や衝撃を受けますので、見えない所でホイールの劣化は進行しています。
ラテックスチューブが使える
リムブレーキの場合ではブレーキシューをリムに擦り付けて減速しますので、ブレーキを掛けている間はリムに摩擦熱が発生します。
アルミリムの場合は放熱性に優れますので熱がリムに籠りませんが、カーボンリムの場合は放熱性が悪くリムに熱が籠ります。
そのカーボンリムにラテックスチューブを使うと、長い下りでブレーキを掛け続けた場合、ラテックスチューブは熱くなったリムに耐え切れずチューブが熱で溶けてパンクします。
ですが、ディスクブレーキの場合ではリムを挟み込む必要がありませんので、ブレーキ操作でリムに摩擦熱が発生しません。
ですので、カーボンリムにもラテックスチューブを付けて走る事ができます。
ディスクブレーキの使用感

雨天時の制動力が違う
雨が降ってなく路面が乾燥しているドライコンディションでは、リムブレーキもディスクブレーキも制動力に差がありません。
どちらもフルブレーキを掛けるとホイールロックします。
ですが、雨が降っていたり路面が濡れていたりするウェットコンディションでリムが濡れると、ブレーキシューを押し当ててもリムが滑って制動力が大きく落ちます。
それがディスクブレーキでは、ディスクプレートが濡れても安定した制動力が得られます。
ですので、リムブレーキでは不安な雨天の下りでも、ディスクブレーキなら安心して下る事ができます。
ただし、路面が濡れているとタイヤが滑りやすくなりますので、ディスクブレーキでも速度は控えめにして下りましょう。
Global Cycling Networkのyoutubeに公開されている動画に、ディスクブレーキとリムブレーキの制動距離を検証した動画が公開されています。
その動画では、雨天コンディションで比較すると、リムブレーキの制動距離の長さが目立つ事が分かります。
リムブレーキでも雨天に強いブレーキシューに交換すると、雨天時の制動力があがります。
詳しくは下記の記事にまとめてあります。

雨天のレース下りも安心
急な下りコーナーがあるコースでのレースは危険です。
晴れていればリムブレーキでも問題なく競技できますが、雨が降っているとリムブレーキでは急な下りコーナーで十分な減速ができない為、コースアウトして崖に落ちるリスクが高くなります。
とにかく、リムブレーキは雨が降ると泣けてくるほどブレーキが利きません。
ですので、雨の日で急な下りコーナーがあるレースに出場する場合はディスクブレーキ仕様のロードバイクにするか、きっぱり諦めて出場を辞退した方がいいかもしれません。
レースも大事ですが、怪我をしたら元も子もありません。
フェード現象に注意
ブレーキを掛け続けると、ディスクプレートが摩擦熱で熱くなります。
ディスクプレートが熱くなりすぎると、摩擦力が落ちてきます。
その現象をフェード現象と言います。
フェード現象が起きてしまうと、ブレーキを掛けてディスクパッドを挟み込んでもディスクローターが滑ってしまい、制動力が大きく落ちてしまいます。
自動車で下り坂を走る場合、エンジンブレーキを利用せずブレーキペダルを踏み続けると、ブレーキが利かなくなります。
自転車にはエンジンブレーキがありませんので、減速させる方法はブレーキレバーを握る事しかありません。
そのブレーキ操作も、常に弱いブレーキを掛け続けるとディスクローターが熱くなり続けますので、強いブレーキを短時間断続的に掛けた方がディスクローターは熱くなりにくいです。
なお、リムブレーキもフェード現象が発生しますので、長い下りでは強いブレーキを短時間断続的に掛けて減速しましょう。
ペーパーロック現象に注意
油圧式ブレーキの場合、ブレーキフルードを作動油として用いますが、フルードの耐熱温度には限界があります。
ブレーキの熱がブレーキフルードに伝わり熱くなると、ブレーキフルードが沸騰し気泡が発生します。
ブレーキを掛けても気泡がブレーキ操作する力を吸収してしまい、十分な力をブレーキキャリパーに伝える事ができません。
その現象をペーパーロック現象と言います。
フェード現象と同じくペーパーロック現象も起きない様に、長い下り坂では強いブレーキを短時間断続的に掛けてディスクローターが熱くなりにくくしましょう。
熱に強い大径ディスクローター
フェード現象やペーパーロック現象を抑える為に、ディスクローターの直径を大きい物にすると効果的です。
ディスクローターの直径を大きくする事により、ディスクローターの表面積が大きくなり、放熱しやすくなります。
また、ブレーキの利きもよくなります。
下りコーナーでも速く走りたい人は、フレームが対応していればディスクローターを大径化する事をお勧めします。
ひと手間多いホイール取付
リムブレーキホイールでは、ホイールをフレームにはめ込んでからクイックレリーズで挟み込めば装着完了です。
ディスクブレーキホイールでは、ホイールをフレームにはめ込んだ後、スルーアクスルをフレームとハブに差し込む必要があります。
ですので、ホイール取付はリムブレーキモデルよりディスクブレーキモデルの方が、ひと手間多く掛かります。
空気の入り込みに注意
輪行時やレースやイベントで自転車を路面に寝かせる事があります。
ワイヤー式なら問題ありませんが、油圧式で同じことをすると空気がブレーキホース内に入ってしまいます。
そのままで走ると、空気がブレーキ操作力を吸収してしまい、十分な制動力が得られません。
自転車を寝かせた場合は、ブレーキを数回握って気泡をブレーキホースから排出させましょう。
シマノのユーザーマニュアルにも、ディスクブレーキ車が倒せられない事が記載されています。
まとめ
リムブレーキとディスクブレーキとでは規格大きく違う為、自転車を買い替えた方がいい。
ディスクブレーキ化させる為には交換するパーツが多く、問題がなければ今使っている自転車に乗り続けた方がいい。
ディスクブレーキはリムブレーキより重量増になる為、ヒルクライムではリムブレーキの方が有利。
ディスクローターで制動させる為、ディスクブレーキ用ホイールはリムが摩耗せず長く使え、またカーボンリムでも転がり抵抗が小さいラテックスチューブが使える。
ディスクブレーキは雨天でも変わらない制動力があるが、ブレーキの不適切な使用による制動不良には注意。
これから新しいロードバイクを買う場合はディスクブレーキモデルにすると良いですが、今乗っているロードバイクを無理に買い替える必要はないと思います。
【参考】ディスクブレーキ用パーツ 105グレード
ディスクブレーキ専用デュアルコントロールレバー
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ディスクブレーキキャリパー
フロント
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リア
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ディスクローター
140mm
160mm