フレームにクラックが入ったら交換するしかなさそうですが、クラック部にカーボンクロスを巻きつける事で補修できますので、フレーム交換しなくても補修する事で引き続き乗り続けられます。
クラックが入ったフレームの補修手順が分かる。
巻き付けて固めたカーボンクロス接合部の強度が分かる。
落車してフレームにクラックが入った場合、フレーム交換するか専門業者に修理を依頼する事になりますが、いずれにしても多額の費用が発生します。
ですが、自分でフレームのクラック部にカーボンクロスを巻き付けますと補修費用が安くできますし、実用上十分な強度を得られます。
そこで本記事では、クラックが入ったフレームの補修手順について取り上げます。
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目次
本記事の要約
本記事に紹介されている手順に従いカーボンクロスを巻き付ける事により、クラックが入ったフレームを自分で補修できます。
自分でフレームを補修しても十分な強度が得られる
フレームにクラックが入った場合、フレームの強度が大きく落ちてしまいます。
クラックが入ったフレームの自転車で走行した場合、走行中にクラック部が破断して落車転倒して大けがしますし、走行できたとしても剛性が大きく低下していますのでパワーロスが大きくなっています。
また、クラックが目視で確認できなくてもフレームの内周部にクラックが入っている場合もあります。
以上の理由によりクラックが入ったフレームは交換するか補修する必要がありますが、専門業者にフレームの補修を依頼しますと多額の補修費用が発生し、補修する部分によっても補修費用が変わります。
15,000円で済む安い補修業者から、5万円や10万円近く掛かる高い補修業者もあります。
また、納期は1か月から2か月程度掛かりますので、その期間は自転車に乗れません。
ですが、自分でクラックが入ったフレームを補修しますと7,000円ぐらいの材料費で補修できますし、最短2日で走行ができます。
そして、自分でフレームを補修しても走行上十分な強度に仕上がりますので、これからも補修した自転車に乗り続けられます。
フレーム補修手順
手順1_ビニールテープで養生する
写真はテープ1幅分ですが、実際に作業してみるとテープを超えてエポキシ樹脂があふれ出ましたので、テープは3幅分巻くと良いです。
エポキシ樹脂をしみ込ませたカーボンクロスをフレームに巻き付けますとしみ込ませたエポキシ樹脂があふれ出ますので、カーボンクロス巻き付け部から少し離れた部分にビニールテープ(絶縁テープ)を巻いて養生します。
エポキシ樹脂は硬化してもビニールテープに接着しませんので、硬化後も簡単にビニールテープを剥がせられます。
また、ビニールテープを巻く事で紙やすり掛け時の目印になりますので、塗装の剥がし過ぎを防げます。
手順2_紙やすりで塗装を剥がす
塗装面の上からカーボンクロスを巻き付けますと、塗装が剥離した時に巻き付けたカーボンクロスも塗装と一緒に剥がれてしまいます。
ですので、母材が見える様になるまで塗装を削り落としてからカーボンクロスを巻き付けますと、カーボンクロスがより強固に接着できます。
紙やすりは中目の120番が使いやすいです。
強く擦り過ぎず時間を掛けて丁寧にやすり掛けしますと仕上がりが良くなります。
段差が大きい場合は粗目の60番の紙やすりで段差が小さくなるまで粗削りしてから、中目の120番の紙やすりで段差がなくなるまで削って仕上げますと作業時間が短縮できます。
もし母材に穴が空くまで削ってしまったとしてもカーボンクロスを多めに巻き付ける事で十分なフレーム強度を確保できますので、フレームに穴が空くまでやすり掛けしても気にする事はありません。
手順3_脱脂する
カーボンクロス巻き付け部に付着している油分を脱脂します。
パーツクリーナーで脱脂するよりも、専用品のシリコンオフを使用した方がより完全に脱脂できます。
シリコンオフは灯油の様な臭いがしますので、ゴム手袋を着用してから作業しますと手に嫌な臭いが付きません。
手順4_カーボンクロスを切り取る
カーボンクロスはいろいろなサイズが販売されていますが、25cm×100cmのサイズを購入すると良いです。
サイズを切り間違えても切り直しが利きますし、余ったカーボンクロスは予備として取って置いたり、フレーム以外の補修用品として使用したりしても良いです。
フレームのシートステーに25cm長さのカーボンクロスを巻き付ける場合、5周ぐらい巻き付けられます。
カーボンクロスの幅は5cmぐらいで十分ですが、切り取ったカーボンクロスは非常にほつれやすいですので、後で再切断して整える為に1cm大きめの6cm幅で切り取ります。
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手順5_エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を混合する
エポキシ樹脂は補修後の強度に大きな差が出ますので、いろいろな物がありますがカーボンクロス専用品を使用すると良いです。
エポキシ樹脂はビニールテープを巻いて圧着する時にカーボンクロスから溢れ出ますので、多めに塗布しても問題ありません。
エポキシ樹脂は25cm×6cmのカーボンクロスに対して6.5gぐらい塗布すると良いです。
エポキシ樹脂 GM-6800は主剤10に対して硬化剤3の割合で混合する必要があります。
6.5gのエポキシ樹脂を使用する場合、主剤5g硬化剤1.5gを0.1g単位で計測できる秤を用いて計量しましょう。
混ぜ合わせる時はゆっくりとかき混ぜて、なるべくエポキシ樹脂が泡立たない様にします。
主剤を計量する。
さらに硬化剤を入れて計量する。
エポキシ樹脂を混合する。
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手順6_エポキシ樹脂をカーボンクロスに塗る
手順4で切り取ったカーボンクロスに手順5で混合したエポキシ樹脂を塗布します。
刷毛で塗ってもヘラで塗っても問題なくエポキシ樹脂を塗布できます。
刷毛の幅は15mm程度の物が使いやすいです。
毛先が長すぎる場合は毛先が15mmになる様にハサミで切りますと塗りやすくなります。
なお、エポキシ樹脂塗布で使用した刷毛は毛先が固まりますので再利用できません。
ヘラを使ってもエポキシ樹脂を塗布する事ができます。
ヘラの幅は刷毛と同じく15mm程度の物が使いやすいです。
ヘラの場合は刷毛とは違い、使用後ヘラに付いたエポキシ樹脂をふき取る事で何度も再利用できます。
エポキシ樹脂をカーボンクロスに塗布する時はラップを敷きますと、カーボンクロスからエポキシ樹脂がはみ出てもテーブルに付着しません。
カーボンクロスとラップにエポキシ樹脂が付着しても、簡単にカーボンクロスを剥がし取る事ができます。
なお、硬化剤と混合したエポキシ樹脂は短時間で固まり始めますので、手早くエポキシ樹脂を塗布しましょう。
手順7_カーボンクロスの端を切り取る
切り取ったカーボンクロスは非常にほつれやすく、手順6でカーボンクロスの端にエポキシ樹脂を塗った際に繊維がほつれる事が多いです。
そこで、エポキシ樹脂塗布後にカーボンクロスの端を切り取りますと、きれいに端が整います。
手順8_カーボンクロスを巻き付ける
手順7で端を整えたカーボンクロスを軽く引っ張りながらフレームの補修部分に巻いていきます。
フレームにカーボンクロスを巻いていく時、カーボンクロスを引っ張りすぎますと、またカーボンクロスの繊維がほつれますので注意しましょう。
手順9_ビニールテープを巻き付ける
フレームに巻き付けたカーボンクロスの上からビニールテープを巻き付けます。
フレームとエポキシ樹脂を塗布したカーボンクロスを密着させる為に、エポキシ樹脂を絞り出す様に強く引っ張りながら巻き付けていきましょう。
手順10_12時間放置する
エポキシ樹脂は12時間で完全に硬化します。
ビニールテープを巻いた状態で12時間放置させましょう。
なお、気温が低い冬場は硬化時間が長くなります。
手順11_ビニールテープを剥がす
12時間経過後はカーボンクロスが完全に硬化しフレームと強固に接着しています。
なお、ビニールテープはカーボンクロスと接着していませんので、簡単に剥がせられます。
手順12_塗料を塗る
エポキシ樹脂は紫外線に弱く、紫外線に長時間さらされますと劣化変色して脆くなります。
ですので、巻き付けたカーボンクロスに塗料を塗って紫外線から補修部を保護しましょう。
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カーボン柄の方が良い場合は、クリア塗料を塗布しましょう。
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手順13_1週間放置させる
常温で12時間硬化後は走行上問題がない強度にエポキシ樹脂が固まっていますが、さらに1週間放置させますと補修部がより強固になります。
加熱するとより強固に固まる
12時間硬化後に60℃で2時間加熱させますと補修部がさらに強固になります。
また、完全に硬化するまでの時間が大きく短縮できます。
補修部を加熱させる方法は段ボールで補修部を囲ってドライヤーの熱風を吹き込むと良いとエポキシ樹脂の説明書に書かれていますが、2時間加熱し続ける必要がありますので火災に注意が必要です。
カイロを使っても加熱でき火災の心配がなく安全で良いですが、カイロの発熱温度があまり高くならない為、60℃の温度帯を2時間維持させる用途には不向きです。
そこでオートバイ用のグリップヒーターを使いますと、ドライヤーを使うよりも安全にカーボンシートを加熱できます。
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グリップヒーターはエポキシ樹脂の加熱処理だけではなく、指先がかじかむ真冬のサイクリングにも適しています。
カーボンクロス強度検証
カーボンクロスで補修した部分がどの程度の強度になっているのか、補修部に荷重を加えて破断テストを行いました。
破断テストで得られたデータを基に計算した所、シートステー中央部を補修した場合、計算上約300kgの力まで耐えられます。
以下、カーボンクロスで補修した部分の強度についてテストと計算を行い検証します。
荷重を加えて補修部を破断させる
直径10mmの金属製丸棒2本をカーボンクロスで接合して、1本の丸棒にします。
カーボンクロスは6周巻いて、1週間自然硬化させます。
自然硬化の場合、熱を加えた硬化と比べますと強度が劣りますが、悪い条件での強度を検証しました。
端からカーボンクロスのつなぎ目までの距離が長い程折れやすいですので、カーボンクロスの端から端まで2,000mm(つなぎ目から端まで1,000mm)にしました。
そして、丸棒のつなぎ目にバケツを吊り下げ、補修部が折れるまで水をバケツに注入した所、バケツの重量を含めて20kgの荷重でカーボンクロスのつなぎ目が折れました。
テスト材料に加わる力を計算
両端を支持した状態で水の入ったバケツを吊り下げますと、バケツを吊り下げた部分に荷重が集中します。
カーボンクロスで接合した丸棒には丸棒の中心部から下側には左右に引っ張られる力が加わり、中心部から上側には左右から押し込まれる力が加わります。
その時カーボンクロスで接合した部分には曲げ応力という力が加わります。
端から端まで2,000mmの中央部で接合した丸棒は20kgの荷重で折れましたので、このデータを基に曲げ応力を計算して、フレームのシートステーをカーボンクロスで補修した時にどの程度の力まで耐えられるか計算します。
曲げ応力は曲げモーメントを断面係数で除算(割り算)しますと求められますので、まずは曲げモーメントと断面係数を計算します。
曲げモーメント
\(\frac{荷重\times長さ}{4}\)
丸棒中央部で接合した端から端まで2,000mmの丸棒は20kgの荷重で折れましたので、曲げモーメントの計算式に当てはめますと
\(\frac{20\times2,000}{4}\)
=10,000
になりました。
断面係数
断面の形状により断面係数の計算式が変わります。
破断テストでは丸棒の外周部にカーボンクロスを巻いて接合しましたので、接合部分の断面形状は中空円形状になります。
\(\frac{円周率π}{32}\times外径\times(外径^4-内径^4)\)
丸棒の外径は10mmですが、カーボンクロスを6周巻く事でカーボンクロスの外周が13mmに太くなりました。
ですので、補修部分の外径は13mm、内径が10mmの中空円形状(パイプ形状)になります。
中空円形状の断面係数の計算式に当てはめますと
\(\frac{3.14}{32}\times13\times(13^4-10^4)\)
=140.2
になりました。
曲げ応力
\(\frac{曲げモーメント}{断面係数}\)
\(\frac{10,000}{140.2}\)
=71.3kgf/cm2
になりました。
シートステーに加わる力を計算
エポキシ樹脂で固めたカーボンクロスの曲げ応力は、テスト材のデータから導き出された計算結果から71.3kgf/cm2でした。
シートステーは長さ400mm外径18mm(2011年モデル TCR1)です。
そのシートステーの中央部にクラックが入り、カーボンクロスを6周巻いて補修部の外径が21mmになった時に耐えられる荷重を計算します。
\(\frac{(外径^4-内径^4)×円周率π×テスト材の曲げ応力}{8×外径×長さ}\)
\(\frac{(21^4-18^4)×3.14×71.3}{8×21×400}\)
=298.5kg
計算した結果、カーボンクロスを6周巻いて補修したシートステーは300kgに近い垂直荷重まで耐えられる事が分かりました。
この事からライダーの体重に対して補修したフレームは実用上十分に走行に耐えられるだけの強度が得られますので、補修後も安心して自転車に乗り続けられます。
フレームの性能が完全には元に戻らない
フレームにクラックが入った場合、業者に修理を依頼するかフレームを交換するしかありませんでしたが、自分で補修する事ができますので、業者に修理を依頼するより格段に安くフレームを補修する事ができます。
ですが、フレームを補修しますとカーボンクロスを巻く事でパイプの太さが変わりますので、フレームのしなりや剛性が変わってきます。
ですので、業者に補修を依頼しても自分で補修しても、フレームの性能は元に戻りません。
補修したフレームでは自転車の乗り味が変わる事もあります。
フレーム以外の補修にも使える
カーボンクロスを用いた補修はフレームの補修だけではなく、他の補修用途としても使えます。
ローラー台の補修
10年以上使い続けている三本ローラー台ですが、ステップの部分の樹脂が割れています。
ローラー台で練習する時に割れたステップに足を乗せるとステップが凹みます。
カーボンクロスを貼り付ける事により、強度が上がり補修部に乗っても凹まなくなりました。
錆びて穴が空いた部分の補修
錆転換塗料を塗って、塗料が乾燥してからカーボンクロスを貼り付ける事で、穴が空くまで錆びが進行した部分の補修ができます。
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まとめ
フレームの補修手順は以下の手順で行う。
手順1 不要な部分にエポキシ樹脂が付着したり、やすり掛けで削りすぎたりしない様にビニールテープで養生する。
手順2 カーボンクロスをより強固に接着させる為に、紙やすりで塗装を剥がす。
手順3 下地処理した部分に付着している油分を脱脂する。
手順4 カーボンクロスを少し大きめに切り取る。
手順5 カーボンクロスとの相性が良いエポキシ樹脂を使い、その主剤と硬化剤を混合する。
手順6 混合したエポキシ樹脂を刷毛かヘラを用いてカーボンクロスに塗る。
手順7 エポキシ樹脂を塗布したカーボンクロスの端を切り取って、ほつれた部分をきれいに整える。
手順8 カーボンクロスを軽く引っ張りながら補修する部分に巻き付ける。
手順9 巻き付けたカーボンクロスの上からビニールテープを強く引っ張りながら巻き付ける。
手順10 12時間放置させてエポキシ樹脂を硬化させる。
手順11 エポキシ樹脂硬化後ビニールテープを剥がす。
手順12 硬化したエポキシ樹脂を紫外線から保護する為に塗料を塗る。
手順13 1週間放置させて補修部の強度を最大化させる。
まずは自分で補修を行い補修具合が気になる様でしたら、新しいフレームに交換するか自転車を乗り換えましょう。
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