検証

【効果あり?】良く転がるハブで速くなるのか

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ハブの回転が良いと良く転がるホイールになるそうですが、実際には効果があるのですか?

一般的なスチールベアリング球を使用したハブ以外にも回転部分の転がりを良くする為にセラミックベアリング球を採用したハブもありますし、高価ですがものすごく転がりのいいハブも販売されていますので、ハブの回転が良くなりますと速くなりそうですよね。

本記事を読むメリット

玉当たり調整の方法が分かる。
ハブの転がりに対する効果について分かる。

ハブの回転が良いと、良く転がるホイールになります。

ですが、実走では効果があるのか微妙です。

そこで本記事では、良く転がるハブの効果について取り上げます。



本記事の要約

玉当たり調整をする事で、40km/h走行時に最大0.49wのパワーロスを軽減できます。

良く転がるハブにしても費用対効果が非常に悪く、パワーロス軽減効果はほとんどありません

玉当たり調整の方法

玉当たり調整は、玉押しとベアリングの当たり具合を微調整する事でできます。

玉当たり調整の前準備

まずは自転車からホイールを外し、ホイールに付いているクイックレリースを外します

なお、カセットスプロケットはホイールに取り付けてある状態でも玉当たり調整ができますので、取り外す必要はありません

反ドライブ側のロックナットを緩める

反ドライブ側(ハブのスプロケットが付いていない面)のロックナットを17mmのスパナを使って緩めます

玉押しは15mmのスパナを使用しますがスパナを掛ける部分が狭いですので、スパナを薄く削るか薄いスパナを使用しませんと玉押しにスパナを掛けられません。

薄いハブスパナが販売されていますので、持っていない人は購入しましょう。

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シャフトが適切に回る様に調整する

ドライブ側(ハブのスプロケットが付いている面)のロックナットにスパナを掛けますと、ハブのシャフトを押さえつけられます。

ハブのシャフトを押さえつけた状態で反ドライブ側の玉押しをスパナで調整します。

シャフトがガタつかず滑らかに回る位置に玉押しを調整できましたら、ドライブ側のロックナットに掛けていたスパナを反ドライブ側のロックナットに掛け直して玉押しが動かない様にロックナットを締め込みます

玉押しを締め込みますと微妙に玉当たり具合が変わりますので、締め込んだ後に手でシャフトを動かしてガタつきや回転が渋くなっていないか確認します。

もし、ガタつきや回転が渋くなっていましたら、ロックナットを一旦緩めて玉押しを再調整しましょう。

ロックナットを締め込んだ時にシャフトにガタつきがなく、シャフトが滑らかに回る様になりましたら玉当たり調整完了です。

サイシスト
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ロックナットを締めますと玉当たり具合が変わりますので、玉当たり具合が変わる事を考えながらじっくり作業しましょう。

玉当たり調整に効果があるのか検証

ホイールを空転させた時の実測値を取って、実測値を用いて効果があるのか計算しました。

玉当たり調整の失速実測値データ取り

玉当たり調整をしたホイールと、わざと玉押しに強くベアリング球を当てているホイール40km/h以上の速度で回します

次に、40km/hまで速度が落ちた所から、次にサイコンに表示される速度の実測値を3回分ずつ取ります。

そして、リアホイールを浮かせて空転させた時のデータ(テスト1)と、自転車だけを負荷を掛けていない三本ローラー台に乗せた時のデータ(テスト2)と、テスト2からさらにライダーが乗った時のデータ(テスト3)の、2パターン×3通りのテストデータを取ります。

なお、アウタートップのギヤ組み合わせの時に手でクランクを回している事から、完全に速度を揃える事は困難ですので、実データは±0.1km/hのズレがあります。

玉当たり調整したデータを「ヌルヌル」、わざと玉押しに強くベアリング球を当てているデータを「ゴロゴロ」と表記しています。

 

リアホイールを浮かせて空転させた時のデータ(テスト1)

1回目 2回目 3回目
ヌルヌル 40.1km/h 39.0km/h 40.1km/h 39.0km/h 39.9km/h 38.9km/h
ゴロゴロ 40.0km/h 38.2km/h 40.0km/h 38.2km/h 39.9km/h 38.1km/h

自転車だけを三本ローラー台に乗せてホイールを回転させた時のデータ(テスト2)

1回目 2回目 3回目
ヌルヌル 39.9km/h 36.1km/h 39.9km/h 36.2km/h 40.1km/h 36.4km/h
ゴロゴロ 40.0km/h 35.9km/h 39.9km/h 36.0km/h 39.9km/h 36.0km/h

自転車にライダーが乗って三本ローラー台でホイールを回転させた時のデータ(テスト3)

1回目 2回目 3回目
ヌルヌル 40.1km/h 29.9km/h 39.9km/h 29.8km/h 40.0km/h 29.8km/h
ゴロゴロ 40.1km/h 29.5km/h 39.9km/h 29.2km/h 40.0km/h 29.4km/h

 

下記表は上記表から速度の失速値を計算した表です。

リアホイールを浮かせて空転させた時のデータ(テスト1)

1回目 2回目 3回目 平均
ヌルヌル 1.1km/h 1.1km/h 1.0km/h 1.1km/h
ゴロゴロ 1.8km/h 1.8km/h 1.8km/h 1.8km/h

自転車だけを三本ローラー台に乗せてホイールを回転させた時のデータ(テスト2)

1回目 2回目 3回目 平均
ヌルヌル 3.8km/h 3.7km/h 3.7km/h 3.7km/h
ゴロゴロ 4.1km/h 3.9km/h 3.9km/h 4.0km/h

自転車にライダーが乗って三本ローラー台でホイールを回転させた時のデータ(テスト3)

1回目 2回目 3回目 平均
ヌルヌル 10.2km/h 10.1km/h 10.2km/h 10.2km/h
ゴロゴロ 10.6km/h 10.7km/h 10.6km/h 10.6km/h

 

テストの結果、リアホイールを浮かせて空転させた時のデータ(テスト1)では玉当たり調整の違いにより0.7km/hの速度低下の差がありました。

ですが、自転車だけを三本ローラー台に乗せてホイールを回転させた時のデータ(テスト2)では0.3km/hと速度低下の差が空転時(テスト1)より小さくなっています。

そして、自転車にライダーが乗って三本ローラー台でホイールを回転させた時のデータ(テスト3)では、ベアリング球にライダーの荷重が加わっていても無荷重(テスト2)より若干ですが玉当たり調整の効果が出ています

実測値から玉当たり調整の効果を計算

まずは、40 km/hの速度でホイールを回転させた時のホイール回転エネルギーを計算します。

諸元は下記の値を使用します。

速度 40km/h
タイヤ周長 2105mm
タイヤの重さ 350g
チューブの重さ 80g
リムの重さ 700g
リムテープの重さ 20g
ニップルの重さ合計 24g

計算式と手順は下記になります。

手順1 速度の単位をkm/h(1時間当たり何キロメートル移動する距離)からm/s(1秒間当たり何メートル移動する距離)に変換します。

\(速度(km/h)\times\frac{1000(mm)}{3600(秒)}\)

\(=40\times\frac{1000}{3600}\)

\(=11.111(m/s)\)

手順2 1分間当たりのホイール回転数(rpm)を求めます。

\(速度(m/s)\times60\times\frac{1000}{タイヤ周長(mm)}\)

\(=11.111\times60\times\frac{1000}{2105}\)

\(=316.706rpm\)

手順3 ホイール外周部の運動エネルギーJ(ジュール)を求めます。

\(\frac{1}{2}\timesホイール外周部の重量(kg)\times速度(m/s)^2\)

\(\frac{1}{2}\times(350+80+700+20+24)\times11.111^2\)

\(=72.469J\)

手順4 タイヤの半径(cm)を求めます。

\(\frac{タイヤ周長(mm)}{円周率π}\times\frac{0.1(cm)}{半径2}\)

\(\frac{2105}{3.14}\times\frac{0.1}{2}\)

\(=33.519cm\)

手順5 ホイール外周部に掛かる遠心力(×g)を求めます。

\(1118\timesタイヤ半径(cm)\timesホイール回転数(rpm)^2\times10^{-8}\)

\(1118\times33.519\times316.706^2\times10^{-8}\)

\(=37.588\times g\)

手順6 タイヤに掛かる圧力(g/cm2)を求めます。

\(ホイール外周部の重量(g)\times遠心力\)

\((350+80+700+20+24)\times37.588\)

\(=44128.142g/cm^2\)

手順7 「手順6 タイヤに掛かる圧力」と「手順2 1分間当たりのホイール回転数」と「手順3 ホイール外周部の運動エネルギー」の計算結果を用いて係数を求めます。

\(\frac{タイヤに加わる力(g/cm2)}{1分間当たりのホイール回転数(rpm)\timesホイール外周部の運動エネルギー(J)\times60}\)

\(\frac{44128.142}{316.706\times72.469\times60}\)

\(=係数0.032\)

手順8 「手順2 1分間当たりのホイール回転数」と「手順7 係数」と「手順3 ホイール外周部の運動エネルギー」の計算結果を用いて、ホイールを回転させるのに必要な運動エネルギーを求めます。

\(\frac{1分間当たりのホイール回転数(rpm)}{60}\times係数\times運動エネルギー(J)\)

\(\frac{316.706}{60}\times0.032\times72.469\)

\(=12.258w\)

 

この要領で空転(テスト1)玉当たりをきつくした時の速度39.3km/hと、荷重なし(テスト2)玉当たりをきつくした時の速度39.7km/hと、荷重あり(テスト3)玉当たりをきつくした時の速度39.6 km/hのホイールを回転させるのに必要な運動エネルギーを求めます

算出した計算値はホイール1本分ですが、自転車には前輪と後輪合わせてホイールが2本付いていますので、算出した計算値を2倍にします。

そして、玉当たり調整をした時のデータを基準に失われた速度とパワーを下記表にまとめました。

 

玉当たり調整をした時のデータ

テスト内容 速度低下軽減 パワーロス軽減
空転(テスト1) 0.7km/h 0.85w
荷重なし(テスト2) 0.3km/h 0.37w
荷重あり(テスト3) 0.4km/h 0.49w

 

ホイールを空転させて比較したデータでは玉当たり調整の差が大きく出ましたが、抵抗を加えますと玉当たり調整の差が小さくなりました。

そして、荷重なしより荷重ありの方が玉当たり調整の効果が大きくなっています。

40km/hで走行する場合、仕事率300wのパワーが必要ですが、タイヤの外径を670mm ベアリング接触面20mmとしますと外径の差によりベアリングにはタイヤの1/33.5の抵抗しか受けません。

さらに、ベアリングの転がり抵抗は0.0010~0.0015ですので、ベアリングで失われるパワーは300w×(1÷33.5)×0.001=0.009wと非常に少なくなります。

ですので、ライダーが乗ってベアリングに荷重が加わったとしてもベアリングの抵抗は変わりません

玉当たり調整をしても荷重なしで節約できるパワーが小さい理由は荷重がない事によってホイールの振れやホイールバランスの影響により発生した振動がベアリングに伝わってパワーロスをしている事が考えられます。

この事から、玉当たり調整をする事により0.49wのパワーロスが改善できます

体感できる程の差はありませんが、僅かに有利になる事が計算結果から分かりました。

サイシスト
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数値化する事で、玉当たり調整の効果が良く分かります。

ものすごく転がりのいいハブの効果は前後合わせて1w未満?

ものすごく転がりのいいハブは、このテストでの最良条件最悪条件の差で考えますと40km/h で走った場合、0.85wのパワーロスを軽減できる事になります。

ですので、40km/h巡行できる人が1w以下のパワーロスも無駄にできないと思っている人にものすごく転がりのいいハブがおすすめです。

ですが、300w巡行できる人が1w有利になったとしても、そもそもパワーメーターの誤差の範囲内ですので効果は可視化しずらいですし、実走で比較しましても微妙な風向きの変化で1w分の効果が分からなくなります

ですので、費用対効果を考えますとスチールベアリングをセラミックベアリングに交換した方がまだ良さそうですが、それでも実走での効果はないに等しいです。

サイシスト
サイシスト
自転車に乗っても、メーカーの販売戦略に乗らない様にしましょう。

まとめ

玉当たり調整はカセットスプロケットまで外さなくても、クイックレリースをホイールから外すだけでできる。

玉当たり調整17mmスパナ薄い15mmスパナを用意してロックナットを緩めた後に、シャフトにガタつきがなく滑らかに回る位置に玉押しの当たり具合を調整する。

玉当たり調整したホイールわざと玉押しを締め込んで回転を悪くしたホイールで回転の比較をした所、空転時では大きな違いがあった負荷を掛けると差が小さくなった

失速した速度の差を0.4km/hと仮定した時、どれだけパワーロスするのか計算した結果、両輪合わせて0.49wわずかながら玉当たり調整の効果がある事が計算結果から確認できた。

ハブを変えたとしても計算上40km/h走行時で0.85wと、1w以下しかパワーロスを軽減できない

転がりのいいハブに交換するよりも、練習してパワーを向上させましょう。

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