リムが軽いと最初の漕ぎ出しが体感できる程軽くなるので、速くなりそうですよね。
リム重量を軽くした時に軽減できるパワーが具体的な数値として分かる。
一説にはホイール外周重量の軽量化による効果は、重量の10倍とも30倍とも言われています。
もし、その説が本当だとしましたら、高くても超軽量ホイールにするメリットが大きいです。
そこで本記事では、ホイールのリム軽量化による効果について取り上げます。
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目次
本記事の要約
ホイール外周重量を300g軽量化しても加速では1wしかパワーを軽減できませんが、加減速が多いレースでは集団に離されにくくなりますので、若干有利になります。
ヒルクライムでは1時間走って56m先行できますので、同じ脚力の人と競い合っている時に若干有利になります。
ホイール外周重量が軽いと加速が良い
慣性力は軽い程小さいですので、自転車も軽い程小さな力で動かせられます。
ホイールを回転させる場合も同様で、ホイールの重量が軽い程小さな力で回せられます。
周長が長くなりますと周長が短い部分より速く動きますので、より大きな力を加える必要があります。
ですので、同じ自転車重量の場合、ホイール径が小さい自転車(ミニベロ)は漕ぎ出しが軽いですし、700Cのロードバイクやクロスバイクは漕ぎ出しが重たくなります。
加速での効果
リムが軽い程加速が良くなりますが、どれ程の効果があるのか計算で数値化します。
40km/hまで加速した時のリムのパワーロスを計算
リムの運動エネルギーからリムに使われるパワーwを計算で求めます。
手順1 リムの運動エネルギーを求める
まずはホイールの外周部であるリムの運動エネルギーを求めます。
\(\frac{1}{2}\times重量(kg)\times(速度(m/s))^{2}\)
リム重量はカーボン400g、アルミ550gと仮定します。
外周部速度はリムよりさらに外周部にタイヤがありますので若干異なりますが、同じ速度と考えて40km/hとします。
運動エネルギーの公式は重量の単位がキログラムkg、速度の単位が秒速m/s(1秒あたり移動する距離m)ですので、単位を換算します。
カーボンリムが400gですのでキログラムに換算( 1/1,000 )しますと0.4kg、アルミリム550gの場合は0.55kgです。
時速km/hを秒速m/sに換算しますと1,000m/3,600s ですので、計算しやすい様にしますと1/3.6になります。
外周部速度は40km/hですので、3.6で除算(割り算)しますと、\(\frac{40}{3.6}=11.1\)になりますので、秒速に換算しますと11.1m/sになります。
単位を換算しましたので、運動エネルギーの公式にカーボンリムとアルミリムの重量と速度を当てはめて計算します。
カーボンリムは
\(\frac{1}{2}\times0.4(kg)\times(11.1(m/s))^{2}=24.7J(ジュール)\)
アルミリムは
\(\frac{1}{2}\times0.55(kg)\times(11.1(m/s))^{2}=34.0J(ジュール)\)
の運動エネルギーである事が分かりました。
手順2 前後ホイールの合計運動エネルギーを求める
ホイールは2本で1組ですので、手順1で求めた運動エネルギーの計算値を2倍にします。
カーボンリムは
24.7(J)×2本=49.4J(ジュール)
アルミリムは
34.0(J)×2本=68.0J(ジュール)
の運動エネルギーになりました。
手順3 自転車の加速に必要な運動エネルギーを求める
運動エネルギーの公式
\(\frac{1}{2}\times重量(kg)\times(速度(m/s))^{2}\)
を用いて、自転車の加速に必要な運動エネルギーを求めます。
自転車重量9kg、ライダーの体重61kg、速度はリムの外周部速度と同じ時速40km/h=秒速11.1m/s として今回は計算します。
計算した所、
\(\frac{1}{2}\times(9+61)(kg)\times(11.1(m/s))^{2}=4,321.0J(ジュール)\)
の運動エネルギーである事が分かりました。
手順4 割合からリムの回転に使われるパワーwを求める
サイコン側で表示させているパワー値ワットwはジュールJと同一の値です。
250w(または250J)で加速する時に使うリムの回転パワー値を割合から求めます。
\(\frac{リムの回転エネルギーJ}{リムの加速エネルギーJ+自転車とライダーの加速エネルギーJ}\timesライダーのパワーw\)
計算しますと
カーボンリム400gは
\(\frac{49.4J}{49.4J+4,321.0J}\times250w=2.82w\)
アルミリム550gは
\(\frac{68.0J}{68.0J+4,321.0J}\times250w=3.87w\)
になります。
抵抗の大きいアルミリムの計算値3.87wから抵抗の小さいカーボンリムの計算値2.82wを減算(引き算)しますと、
3.87w – 2.82w = 1.05w
になります。
ですので、同じ速度で加速する場合、550gのアルミリムは400gのカーボンリムより1.05w強くペダルを踏み込まなければなりません。
40km/hまで加速した時に掛かる秒数を計算
リムのパワーロスを求めた計算と同じ条件でペダルを漕いだ時、40km/hまで加速させるのに必要な秒数は下記計算式で求められます。
\(\frac{リムの回転エネルギーJ+自転車とライダーの加速エネルギーJ}{パワーw}\)
計算しますと
400gのカーボンリムは
\(\frac{49.4J+4,321.0J}{250w}=17.48秒\)
550gのアルミリムは
\(\frac{68.0J+4,321.0J}{250w}=17.56秒\)
になります。
加速時間が長いアルミリムの計算値17.56秒から加速時間が短いカーボンリムの計算値17.48秒を減算(引き算)しますと、
17.56秒 – 17.48秒= 0.08秒
になりますので、アルミリムではカーボンリムより0.08秒の遅れが発生します。
40km/hは11.1m/sです。
11.1m/sは1秒当たり11.1m進みますので、秒速に遅れが発生している秒数を乗算(掛け算)しますと、
11.1m/s×0.08s=0.88m
の差が発生します。
ですので、同じパワー値で加速する場合、550gのアルミリムは400gのカーボンリムより0.88m離される事になります。
ヒルクライムでの効果
ブレーキを掛けて減速する必要のないヒルクライムコースでは加速する時にはリムが重い程ペダルを強く踏まなくてはなりませんが、失速する時にリムから路面に加速時と同じ運動エネルギーが加えられます。
ですので、加速しづらく失速もしづらいもなる為、リム重量とリムの回転速度は関係なくなり、単純にホイール重量が上りで影響します。
計算式を掲載しますと長くなりますので、今回は下記計算フォームで得られた計算値を使用しています。
ヒルクライムでのパワーロスを計算
ホイール1本につき550gから400gに軽くした時、ホイール2本で合わせて300gの軽量化ができます。
そこで当ブログに掲載している速度から登坂抵抗と走行時間を計算するフォームで計算した所、
身長 171cm
体重 61kg
自転車重量 9kg
速度 18.658km/h
ハンドルポジション係数 100
走行距離 20.5km
標高差 1,200m
転がり抵抗係数 0.002999
の場合、250wのパワーが必要ですが、その内登坂抵抗で消費されるパワーwは208.2wです。
そして、合計300gリムが重くなる事で自転車重量が9.3kgに増えた場合、上りでは速度が18.602km/hとサイクルコンピュータに表示できない程の僅かな差しか遅くなっていませんが、登坂抵抗で消費されるパワーwは209.1wに増えます。
ですので、300gリム(自転車重量)が軽くなった所で、登坂抵抗は208.2wから209.1wと0.9wしかパワーを軽減できません。
ヒルクライムでのタイムロスを計算
ヒルクライムコースをパワーから速度を計算するフォームで計算した所、
身長 171cm
体重 61kg
自転車重量 9kg
パワー 250w
ハンドルポジション係数 100
走行距離 20.5km
標高差 1,200m
転がり抵抗係数 0.002999
の場合、速度は18.658km/hになりますが、合計300gリムが重くなる事で自転車重量が9.3kgに増えますと速度は18.602km/hとわずかに遅くなります。
その時、それぞれ1時間走った時の時間差を計算します。
まずは時速に1,000を乗算(掛け算)して1時間で進む距離mにします。
速度18.658km/hは1時間で18,658m進みます。
速度18.602km/hは1時間で18,602m進みます。
そして1時間で進む距離の差を求めますと
18,658m – 18,602m = 56m
になります。
次に速度が遅い方(アルミリム)の時速を3.6で除算(割り算)して秒速を求めますと、
\(\frac{時速18.602km/h}{3.6}=秒速5.167m/s\)
になります。
そして遅れている距離56mを速度が遅い方(アルミリム)の秒速5.167m/sで除算(割り算)して、遅れている秒数を求めます。
\(\frac{遅れている距離56m}{アルミリム使用時の秒速5.167m/s}=10.8秒\)
この計算結果からアルミリムをカーボンリムに変えて300g軽量化しても1時間走って約11秒しか速くなりません。
この事から、リムの剛性を犠牲にしてまで超軽量ホイールを履くよりも、少しリム重量が重くても剛性のある軽量ホイールを履く方がリムの変形によるパワーロスが小さくなりますので、※より速く走れる事も考えられます。
※ホイール重量に比べて価格が異常に安いカーボンホイールは剛性が犠牲になっていますので漕いだ力がリムに吸収されて速く走れないだけではなく、リムに必要な強度が確保されていませんので衝撃でリムが割れやすく危険です。
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ミドルグレードですので若干重いですが、エントリーグレードのホイールからの買い替えにおすすめです。
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アルミリムですが、空気抵抗を受けにくいヒルクライムではカーボンホイールに匹敵する性能があります。
まとめ
リム重量が軽くなると漕ぎ出しも軽くなるが、計算上では1wしかパワーを軽減できない。
300g軽いリムを使用して停車時から40km/hまで加速すると0.88m先行できるので、信号が多い道や加減速が多いレースでは少し効果がある。
ヒルクライムでは11秒しか速くならないが56m先行できるので、同じ脚力の人と競い合っている場合は少し有利になる。
超軽量ハイエンドカーボンホイールを無理して買うよりも程々の価格帯のホイールを選んで、ホイールで埋められない差は練習して速く走れる様になりましょう。
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